良いイベントの見分け方を考える

 2023年度も下期に入り増えている海外イベントへの参加/出展相談ですが、最近特に増えているのが、どうやって”参加すべき”イベントを見分けるか?といった相談です。

 コロナ期からの回復途上、そして円高の影響もあり、2019年までと比較して企業の海外出張は回数が減っているのが現状です。

 そのなかで、ベンチマークとして参加する定番以外のイベントをどのように見極めるかが企業の課題となっているようです。今回は、日々世界中のイベントをリサーチするイベントグローブが、どのように”参加する価値のあるイベント”を探しているのかをお話します。

イベントの属性(カテゴリー)から考える

 まず当たり前のように、自社の産業属性にあったイベントを選ぶのが王道とはなるのですが、新たなテクノロジーはアプリケーション用途が多岐の産業に渡るので単純に自動車メーカーが自動車ショーに参加すれば済むものでないのが現実です。

 通信ネットワークであるインターネットも、当初は通信プロトコルとして通信やIT関連のイベントが主流でしたが、自動車から家電、医療まで様々なの産業分野で重要なサービスとなっています。

 最近の事例でみれば、暗号通貨に携わる技術として最初に認識されていたブロックチェーンなども、エネルギー分野における資産管理や法令分野におけるドキュメント管理へとアプリケーションが拡大し、やがてあらゆる産業において利用されるようになるでしょう。

 このような現象は、自動車、食品、化粧品、医薬品、金融などあらゆる業種において起きる可能性があります。1960年代に開発された高分子吸収体も当初は用途が分からなかったものが、現在では使い捨ておむつや生理用品にに無くてはならない材料となり、砂漠の緑地化など、様々なアプリケーションが開発されており、生活から環境まで大きな意味を持った製品となっています。

新技術や新素材とは往々にして、使い道が分からないもの。

 テクノロジーというものは、開発された時点ではまだ本当の用途が分かっていない(開発者が気づいていない)可能性が大きく、このような基礎技術と具体的なユーザーが集まる場所こそがイノベーションが始まる場所ではないでしょうか?

 これを考えると、やはりテクノロジー系のイベントというのはイノベーションのネタを探すために重要で、自社の産業分野に限らずCESSXSWViva TechnologyThe Next WebTech Open Airあたりは、どのような企業に所属していても参加する意味が大きいと思います。

コンテンツから考える

 イベントを構成する要素としてのコンテンツ。展示会は、原則、継続性やスケールが大事ですが、本来参加すべきイベントはカンファレンス有りのものになります。

 仮にあなたがあまりカンファレンスに参加しないとしても、質の良いカンファレンスのあるイベントには、質の良い参加者が集まる。質の良い参加者は質の良いビジネス機会をもたらす、という傾向があります。どうでも良い展示会だけのイベントでは、時間つぶしで参加する人も多く、参加者出展者共に得るものは少なくなってしまうでしょう。

Webサイトから見分けられるのは何か?

 この見分け方については、参加前には主催者のWebサイトに頼らざるを得ないのですが、イベントグローブではいくつかの基準を設けて、イベントの調査を実施しています。

1. フレームワーク

 参加者に主催者からのメッセージが伝わることは重要です。イベントサイトを通じて、参加者が必要としているメッセージを伝えることの出来るイベントには、参加者の評価が高いものが多い傾向があります。

 参加者にとって最も重要な情報、それは5W1Hのフレームワークです。もしイベントの広報窓口であるWebサイトで「いつ」「どこで」「なにを」といった基本的な情報を提供できていない場合は、もしかすると現地に行っても同じことが起きる可能性はあります。

2. 登壇者のバランス

 どんな人達がカンファレンスに登壇しているのかは、カンファレンスの品質を測るための重要な指針です。特に注目しているのは、登壇者にそのイベントのテーマである産業の顧客企業が含まれているか?です。カンファレンスの登壇者にサービス提供者と利用者が両方登壇して、初めてそのサービスの必要性が見えてくるのです。利用者不在では、一体そのサービスがどうして必要なのかを図ることはできません。

 過去にみた事例では、マーケティング関連のイベントでカンファレンス登壇者の殆どが広告代理店やテクノロジープロバイダーで、実際にそのサービスを利用している/ニーズがあるユーザー企業が殆ど登壇していないケースがあります。彼らのサービスを利用するユーザー企業がカンファレンスに登壇し、実際にサービスのニーズや可能性を話さないのであれば、そのセッションは単なるセールスピッチと変わりません。

 極端な話をすれば、どんな産業であってもユーザー企業さえ登壇していれば、業界におけるニーズやユースケースを知ることは可能です。

3. CEOクラスがコミットしているか?

 イベント参加にあたり期待されるのは、イノベーションを起こす新しいアイデアやサービス。特にイノベーションに重要なのが、企業のトップによるコミットメントです。企業の代表者が忙しいのは世界共通ですが、特にグローバル企業のCEOやファウンダーは分刻みでのスケジュールで動いています。そんななか、わざわざ時間を使って、ひとつの場所に留まりカンファレンスに登壇するようなイベントは、その企業にとって重要なイベントであることは間違いありません。そこで語られる内容、そこで出会う人々が企業の未来を決めるからです。

 一般的な国内のイベントでありがちな上場企業の社長がイベントの内容も知らずに登壇のためだけに会場にきて、聴衆の聞きたい話ではなく、的外れな話や自慢話をして帰っていくようなことは真のグローバルカンファレンスではありえません。仮にそんなことをすれば、二度と登壇することはできないのがグローバルの掟です。


 大規模イベントになると登壇者の数も数百人になるので、すべてのイベントの登壇者を網羅することは難しいのですが、編集部内では2023年のVivaTechnologyのスピーカーラインナップはバランスが取れていて魅力的との評価があがっています。

 残念ながら今年のViva Technologyへの参加は叶いませんでしたが、来年こそは参加してみたいと思っています。


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